竜はうわばみ

旦那が酔っ払って客の前で寝てる……うわ、珍しいな。
手酌で呑んでた独眼竜に酒呑むと狐が落ちんのかって言われた。そういや布団に入った記憶がねえな。
狐のときって興味ないことすぐ忘れるから記憶あやふやだけど、さっき酒呑まされてたっけ？

独眼竜が頭触ってきたから何かと思ったら、あんたどこに耳があるんだって言われた。
旦那が俺様の耳がかわいいって頭撫でてるって言ってたけど、俺の耳って、普通に顔の横にあるよな…頭じゃねえよな……
頭触って耳探してたら急に旦那が起きてわしわし頭撫でてきた。寝るぞって言われてそのまま腕ひっぱられて部屋戻った。

……狐、酒で寝ちゃうのかな。落ちたって感じではねえけど……。
そういや、かすがから手紙来てなかったっけ……？　読んだおぼえがないな。ど、どこやったんだ俺様。

布団から抜け出してごそごそ探してたら旦那が佐助？て起きた。
まだ酔っ払ってるみたいで布団に引っ張り込まれたと思ったらぎゅっとされて出れなくなった……ちょっと、俺様探し物があるんですけど……

手紙は明日だな。……忘れてねえといいけど。



旦那がさすけのみみはやわらかいなって言って頬擦りした。
………早急に手紙探さねえとな。

家に雨漏り

数日前、酷い雨が降った。
雷の酷い雨であった。
佐助は、最初は、風がすごい！と騒いでいたが湿り気がひどくなるにつれて耳がしんなりした。
雨風に応じて耳が動くのがおもしろい。


女中が、呼びに来たので一撫でして佐助を政宗殿に任せて部屋を出た。
部屋に戻ると佐助が飛ぶようにして抱きついてくる。政宗殿は、愉快そうであった。
女中は、雨漏りで呼びに来ていた。
水が桶に溜まるのがおもしろかろうと佐助を連れていった。



最近、佐助の寝起きが悪い。以前からよく眠たがったが、うーうー、日が高くなるまで起きぬ。離れると嫌がるので傍にいるが、なんで眠いのーとぐすぐす言っている。
午を過ぎれば、元気になって傍にいるが……。
夜には、供に眠っているのにおかしなものだ。
可愛かったので、口を吸った。


佐助は、俺を好きか？と聞くと、うん！と嬉しそうに言う。
それにしても、政宗殿は、よく飲まれる。佐助を撫でながら飲んでいると、こいつは、眠らねぇのかと仰られた。
眠いのでしょうなぁ……。目蓋が落ちて参りました故。
眠るか？と言っても離れないので目が覚めるやもしれぬと思い試しに酒を飲ませてみた。
いやー、と言って泣かれてしまった。
佐助の分まで飲んだ。

下弦

邸内見回ってたら独眼竜が手酌で呑んでたとこに鉢合わせした。このお方はほんと気配がねえなあ……俺様が相性悪いだけかね。おっかねえな、仕事しにくいったらねえよ。
なんだ狐憑きは嘘なのかって言うからさあねって言っておいたけどにやっとされただけで後は何も言われなかった。
寝ないのって訊いたけどもう少しなっていうからちょっと酌してやった。女中さんのうちからきれいどこ呼ぶかと思ったけど、何されるかわかんねえしもうみんな寝てるしなあ。

片倉さんはどうしたのかなと思ってたら今夜は噛まねえんだなって言われた。うーんその言い方なんか語弊があるよね。
まあ、狐があんたをおっかながってんだよ。だから俺様も警戒するんだろうよ。

……うん？　そうね、そのうち落ちるんじゃないの。落ちなかったら？　はは、始末されんじゃねえのかな。狐憑きじゃ旦那の邪魔だしね。

あ、と、そろそろ戻るわ。昼間は狐が旦那にべったりであんたも手合わせも出来なくてつまんないだろうけど、悪いねえ。まっ、今回は諦めてよ。
ん？　いやあ、別にわざとなんかじゃねえよ？　けど、今は俺じゃ止められねえしね。無用な怪我はなしでお願いしたいね。



あさごはん食べないのかってだんなにおこされた……ねむいー。
だんなにくっついてうとうとしてたらくろいのが来た。唸ってるのに笑ってあたまなでた！！　ざわってする！！　やだ！！

あとからだんながいっぱいなでてくれた。くろいのこわいんだよ！　て言ったけどだいじょうぶだってまた言われた。
だんな笑ってる。ほんとにこわいのに！！

おそらくもが出てきた。雨戸がたがたしてる。

月も欠け出す

かわゆうございましょう。
こら・・唸るな佐助。申し訳ない、未だ、なれておらぬのです。
はぁ、これは飲めませぬゆえ。某は、ご相伴に預かりましょうぞ。
大丈夫だ、佐助、不味いものではない。
某の自慢でございます。耳もこのように柔らかで、抱いて寝ればあたたかいのです。
ん？どうした、眠いか？もう暫し待っておれ、佐助もそのうちともに飲もうな？
かわいらしゅうございましょう。これは、いつもこうなのです・・・・。
はは、そのようなことを仰っては、また噛まれますぞ政宗殿。


佐助は、始終政宗殿と片倉殿に唸っている。
危ないから守ってあげる！と昨夜は長い間起きていた。
髪は結局切らなかった。
政宗殿は、暫く滞在されるそうである。
かすが殿から佐助に文が来ていた。
 

なにあれ！

えんがわいたらこわいのきた！　くろいの！　めがかたっぽしかない！
唸ってるのに平気でこっちくるから噛み付いたらくっついてたでっかいのに殴られた。ここだんなのおしろなんだからね！　おっかないのは入っちゃだめ！

がんばって追い返そうとしてたらだんながきた。だんなーて言ったらぎゅってしてくれたけど手当てさせますとかこわいのに言ってた。
そいつこわいんだよ！中いれちゃだめだよ！　て言ったけど大丈夫だっていう。
こわいのがおもしろがってくちぶえ吹いた。ざわってしたからまた唸ったらだんなにこらって怒られた……。


だんながこぶ撫でてくれた。あとでかみのけそろえようなっていう。だんなが切ってくれたのになんでもっと切るの。