桜の花

いらとする。
あれが帰るまで桜が持てばと思ったがどうにも持つとは思えぬ天気である。
なんということもなく風が吹く、どうにも、これは美味い類のものではない。
散ってきたのを食うてみたが、なんとも言えぬ味であった。

甲斐に着いて早々にお館様は出かけられたと聞いた。
せっかく来られたのだから、ゆっくりしていかれよと仰って頂いたが、実に申し訳ないことをした。
暇を潰すに鍛錬でもと思ったが、そもそもその心持ちがおかしい気がする。
よくも分からぬ、風ばかり吹く。
ああ、これが春一番かと思ったが、矢張りこれは美味くない。
咲いているものを食えば美味いかと思ったが、かわいそうなのでやめた。
幸村様！！と家人が、走ってくるのが見えた。
別段どうということもない。


幸村