定時連絡ついでに

才蔵から真田の旦那宛に手紙が来た。俺様への報告書とは別に。旦那のおてがみにお返事らしい。
え、才蔵に手紙なんていつの間に。ていうか忍隊に連絡ならなんで俺様に言わないわけ？

旦那……俺様が長だと不安なのかな……。そういや最近寝坊ばっかしてたしなあ。でもあれは旦那のせいで……いや、自己管理出来てないと言われればそれまでなんですけど。

…………。

今日は別の部屋で寝よう。屋根裏でもいいし。そんで明日は早起きしとこう、うん。
いや〜休暇だってのに俺様ってば働き者だなあ、はは。………はあ。

塩田平を越えて

三月八日　晴れ


ということで別所に来てるわけだけど。

えーと…………
ま、まあ、旦那が楽しそうだからいい……の、か？　温泉浸かってゆっくりすればなんぼかまともに戻るかね。

手伝いのひとの帰しちゃったから、まあ昼には一度来てくれるけど、俺様までいなくなったら世話するひとがいねえしな。大将んとこに手伝いに行けないのは困りもんだけど、しゃあねえや。才蔵往き来させとくようにしといたし、烏も一羽向かわせてるし、回りも落ち着いてるし、まあ……平気かな。
おっと、そろそろ定時連絡が来るかな。一週間も城を空けるって、まずいよなあ……ほんと……はあ。


ところで風呂行くたびに一緒に入るぞってひっぱってかれるのは何の拷問なの一体。

いやあ春だからかね〜

ただいま！　飛んで帰ってきましたよ旦那のかわいい佐助ですよ〜。
ってまだ起きてるし！　もう夜だよほらほら布団入って！　熱は？　ない？　りんごむいてもらおうか？　あ、寝るからいらないか。
いやうんもううぐいすでも俺様でもなんでもいいから頼むから今日は寝てよ。俺様の部屋？　ばか言うんじゃねえよ寒いだろうが。
なんなら明日お医者呼ぶから！　ね！　大人しくしててね！

あ、屋敷の警護？　才蔵に押し付……替わってもらったからだいじょうぶ。あんたが心配するようなことは何もねえよ、うん。烏と寝たいなら連れてこようか？　いらない？　俺様はここで不寝番してますからね〜安心してね。
あ、子供とかなんとかもどっかで仕込んだりもしないからね〜だいじょうぶだいじょうぶ。

具合良くなったら大将のとこ行こうね！　旦那もしばらく会ってないだろ、十日くらい。お館様切れかもしれないし……　あっいやいやなんでもないから！　うん！



………はあ。
春ってこええな。

才蔵に手渡された……

………おまさちゃんて去年までいた女中さんの？
へえ、赤ちゃん生まれたのかあ。そりゃめでてえわ。おんなのこだったらせっかくだし甘酒のひとつでも届けるとこだけどねえ。
いや、なんか出先でいろいろもらってさ…桃の節句…うちにはおんなのこいないっつーのに。

………。
……………。

で、これは間違いなわけだよね。
俺様が届けに行ってもいいけど、真田の旦那が直接届けたほうが喜ばれるよな。
つうことでお部屋においときますから、気付いたら届けるなり誰かに改めて頼むなりしなよ。
俺様これからまたちょっとお仕事あるから、夜半にでもまだ旦那起きてるようなら顔出すわ。
じゃあ行って来まーす。

さすけ




あれ？　ところで旦那は今どこに出掛けてんの？
……おまさちゃんへの文が俺様の手にあるってことは、俺様へのおてがみは、つまり……

ちいっ！　間に合うか！？
頼むから妙なこと書いててくれんなよ旦那ぁッ！！