しばらく旦那も甲斐にいるのかな…

かすがちゃんに会いに行ってぐずぐずうざったく愚痴こぼしたのに怒られるどころかすごい生温い目で見られた挙げ句に慰めてほしいなら慰めてやるが、て言われた。
あの子何むだに新しい技身に付けてるの！　すげーすっきりしねー！
ううやさしくない……。

そのあと甲斐に来たら真田の旦那が大将と呑んでてひっくり返ったっていうから様子見に部屋に行ったんだけど、捕まって布団に引っ張りこまれたからしょうがなく一緒に寝たのに、目が醒めた途端飛び退いて着物の確認するとか……さすがに傷付く……俺様が旦那を襲うわけないでしょーが。
気をつかってるのかなあって思ってたけど、単に俺とすんのがいやなだけなのかもな……だったら布団に引き込むなっての。期待するでしょ。

…………。
……いやいや期待とか。なんだそれ。おかしいから。身の程身の程。……効かないおまじないだな、これ。


そういや旦那に歯もらったけど……こどもの歯とか！　うそだろーあのひといくつだよ！　まだ乳歯残ってたの！？
下は立派なもん付けてるくせになあ……。
旦那の口ん中とか見たり触ったりしたことないから気が付かなかったけど、まだ他にもあるならさっさと抜いちまわねえと歯並び悪くなっちゃうよ。

で、この歯どうしようかなあ。下の歯かな上の歯かな。縁の下か屋根の上……いい歯が生えてきますよーに、とか……


…………。


風来坊にもらったお守り袋に入れて首にさげとこ。
へへ……いいよな、このくらい。ないしょ。

人恋しいのかなあ

やっぱりふられたのかな…？


呼ばれたのに何もしてこないから、俺がしろってことなのかなーと思っただけなのに怒られた……
そういや旦那って口でしろとか、あんまり言わないな。奉仕されるのきらいなのかな。うーんまあ俺様も見様見真似というか、女の子がしてくれるやつの真似しか出来ないからきもちよくないかもしれないけど……

結局一緒に寝ただけなんですけど……え、意味わかんねえ。布団が狭いだけだろ。わざわざ閨のお仕事に呼んどいてなにそれ。
ってきいたらお前がいやだって言ったからだって言ってたけど……ええー、俺様そんなこと言って……言…………

……………もしかして骨折れてたときの話？

えっでもそれはさあ！　当たり前じゃねえの！　いつまで経っても治んねえしお仕事に差し支えるし、家出してた間のほうが養生できたくらいなんだぜ。

旦那は俺にお仕事させたくないのかなあ。つうか、そういうのどうでもいいのかなあ。
俺様、お仕事できなかったら正直、旦那のとこにいてもしょうがないと思うんだけど。役に立たねえ忍びとかさあ、飼っててもしょうがないでしょ。金ばっか掛かるじゃねえの。

旦那は何で俺を呼ぶんだろ。気易いんだと思ってたけど、よく不機嫌な顔してるよな。
閨で楽しそうにしてる旦那とか、しばらく見てねえなあ。つまんないなら別の呼べばいいだろ……俺様別にうまくないし……


………でも別の忍びとか呼ばれたら、ちょっと、いや、かも……
あー、贅沢だな、俺。身の程身の程。


やっぱしばらくこっちにいないほうがいい気がする。俺様ほんと、思い上がりすぎだよな。
かすがちゃんに怒られてこようかな……なんだかんだであいつえらいよな、忍びに徹してんだもん。

……はあ、上杉国境まで行くか……。

邪魔とか

旦那にへんなこと吹き込んだのって誰だよ。



やたらぎゅうぎゅうくっついて来るから溜まってんのかなあと思って、やりたいの？　て訊いたらなんか…すごく複雑な顔された……
風邪もほとんど抜けたしやりたいならって思ったんだけど、そういうんじゃねえのかな。まあ、誰かお相手いるならわざわざ俺とする必要もねえか。お相手いなきゃ処理はいるんだろうけど。

……改めて考えてみたら、前に閨に呼ばれてから結構日が経ってるな。やりたい盛りなんだし溜まってねえわけねえよね。じゃあやっぱり、お相手いんのかな。
まあ、俺が詮索することじゃないよな、うん……。


………なんかすげえしんどい。なんでだろ。旦那がおかゆ持って戻ってきたときまだおてがみ読んでないふりしちゃったよ。なんで俺の世話してんのことひと。なんでこんなもん書くんだ。意味がわかんねえ。上田にいなきゃ都合が悪いなら、仕事命令すればいいのに。


大将のとこいきたい。

暗い

んあ。何、もう夜？　何時だろ……そんな遅い時間じゃねえのかな。

あー、熱大分下がったな。まだだるいけど、頭動くわ。
そういや風来坊がいた気がしたんだけど、気のせいかな。つうかそもそも今日は何日だ。よくわかんねえ。旦那の風邪ってすっげえ強力だな……まあ、あの旦那が寝込んだくらいだもんなあ。
…蔓延しなくってよかったぜ。

お、なんだこれ。…桃じゃないの。
てことは旦那が来てたのかな…？　あのひと暇なのかね。風邪移したから責任感じてるのかな。気にしなくていいのに。
まっ、あと一日くらい寝てれば起きても平気でしょ。そしたら甲斐に戻ろ。旦那の邪魔しちゃ悪いしね。……うん。


………桃うまいな。

いま何時…

あれ？　なんで風来坊がいるの。旦那は？　いなかった？　…お仕事でどっか出てるのかな。あんたと違って真田の旦那はちゃんとお仕事するのよ。え？　別に嫌味じゃないって、はは。
そういやこないだごめんねー旦那が……ちょっと、再戦とかそういう話じゃないでしょ。やめてよねーあんたらがやりあったら屋敷が壊れるんだからさあ……

あ、そういえばさあ、聞いてよー。旦那に好きな子できたみたいなんだー。すごいよね。…ちょっとなに変な顔してるの？　真田の旦那はいい男なんだからねー。なんで女のひとりもいないのかってそっちのほうが不思議じゃないの。……いやまあ、そうなんだけどさ…真面目なひとだからねえ。
え？　俺様？　なんで俺様が出てくるの？　関係ないじゃないの。……ほんとあんた変な顔してるけど大丈夫？

まあとにかく、邪魔しないであげてよね。俺様も邪魔しないようにしてるんだから。え？　熱？　下がらないねえ。でも旦那が山から氷切り出してきてくれたからちょっとましかなー。……って熱は別にいいでしょ。旦那のお相手の話をしてるんでしょ。
は？　そりゃ俺様は旦那のこと好きよ。当たり前じゃないの。自慢の旦那なんだからね。だから早いとこいいひと見付けてさあ………

……………、

ん…？　子守歌？　歌ってくれるの？　はは、あんた歌とか詩とか上手そうよね。
あー、わかったわかった、寝るよ。寝るから。どうしたの急に。変な風来坊だなあ。

………やっぱ歌上手いねー。