桜はまだかいな

桜を追うにも未だ早いってね。
上田は梅の良い匂いがするよ。艶冶な桜も良いけど梅もなかなか、淑やかで良いねえ。

さっきあんたのとこの忍びに会ったよ。
何処ぞの西にでも忍んで行く処だなんて話してたんだけど、他の忍びがあんたからの文持って追っ掛けて来てさ、意味が判んねえから取り敢えず帰るって言って情けねえ面で飛んでったよ。
あんた、なんか困らせてんのかい。

ま、俺は花見しながらゆるゆるだく足で馬向かわせてくから、そっちに着くのは明日の午過ぎになるかね。出掛けないで待っててくれよ。
折角この前田慶次が寄ってこうってんだ、土産の酒も呑まないじゃ、損ってもんだよ。

そうそう、此の文は忍びにあんたの文持って来た奴に持たせるから、あいつが寄り道でもしてなきゃ、先にあいつが着いてるだろうね。

んじゃ、明日寄らせてもらうよ。旨い肴でも、用意しといてくれよ。
後は庭に梅でもあれば、上等ってもんだ。


前田慶次郎利益


真田源二郎幸村殿

さすけへ

めし

佐助から

返事が来ぬ
・・・・・・
とりあえず、もう一通書いてみることにした。

三月二十一日

今日は旦那がいなかった

ので、自分の部屋に戻って来たんだけど、なんか俺様仕事ないんですけど。どういうこと。
長は養生のためにしばらく休みだと聞きました副長に、てうおい！　才蔵！　あの野郎……

まあそんなこんなで自室でごろごろする俺様です………あばら痛いのはほんとだしからだだるいし、まあ養生はいいけどさ、でも暇なのもなあ。仕事してたほうがなんぼかましだぜ。


………相変わらず口きいてくれないけど、今日は顔も見てないな。俺もまだ朝のうちには起きたんだけど、もういなかったしな。
まあ、鍛錬に出たんだろうけど……昨日は一日部屋にいたし鈍るとか思ってるだろうしな。

最近手合わせにも呼ばれねえなあ。まあ、あばら治ってねえからかもだけど……。


はあ……。
偵察にでも出ようかな……なんか上田いても悪化するばっかだしな……だったら仕事してても同じだ同じ。
はあ。



ところであぶり出しまで試したんだけどこの宛名だけのおてがみってなんなの。
………三行半とか言わねえよな。こええよ。

佐助へ

さすけへ