佐助を見つけたと

山深い。雨が降る。土が滑る。暑い。周囲が熱で煙ぶる。
鼻が利かぬ。
篠を突く雨とはこのことかと思う。水がぬるい。暑い。










佐助！！

 

起きてられない

どっかの小屋にいるみたいだってのはちょっと前に気付いてたけど、誰もいないと思ってた。ら、さっき目が覚めたときに誰かいた。
誰だろ。よく見えねえな。気が付いたみたいで覗き込んできて、こんなとこで悪いけどまだ動かせないから、ごめんな、て言った。
聞いたことある声の気がする……思い出せねえけど……

からすも手当て済ませたよ、て何か差し出された。ほっぺたにでっかいくちばしが触った。俺様のからすみたいだ。死んだと思ってたよ。

なにか言おうと思ったけど、ほとんど声出なかった。無理しなくていいよって言われた。すげえ眠い。



薬草のにおいと血が腐ったにおいがする……
やべえな。傷が腐ってるかな……なんか、生き延びる気がしねえ……。

雨の音がする……

七月十一日甲斐にて 雨

雨が降った・・・。
布団が干せぬ・・・・。
佐助・・・・。


槍を出して乾かしていたら何をなさっているのですか！！と家人が来た。迷惑か、と聞くとそういうことでは・・・・・・・と言葉を濁す。迷惑なのだな、と思ってやめた。
布団は、乾かなんだ。


忍隊から報告は何もない。

七月九日甲斐にて

特に何もなかったように思う。
お館様から任されたお役目しっかりと果たさねば・・・！

忍隊の者に上田から布団を届けてもらった。今日も晴れておるゆえ干さねばと思う。

すまぬな、と

仰られた。




そうか……しかし未だ油断はせぬよう。ご苦労であった。才蔵は、お館様がお呼びだ。
む…、いや、俺は未だお館様の元に駐留する故。
戻ってきた者は十分に休ませてやれ。お館様から湯も頂いている。上田にもそう伝えるよう。よう休め…。


風魔は、北条へと戻ったようである。忍隊の者は思うより欠けなかったようだ。長が…と報告に来た者が漏らしていた。
佐助は戻らぬ。
お館様は、明日上杉に向かわれる。お供をと申し上げたが、留守を守れとのお言葉である。喉元まで佐助がおるやもしれませぬ故……と出かけて止まった。


お役目、存分に果たして見せましょうぞ。