筋肉落ちた

体起こして座るとふらふらするなあ。鈍りすぎだぜ……
旦那が薪割りしてる間に起きて、かすがに支えてもらって風来坊に体拭いてもらってたら、戻って来た旦那が某がやる！　とか言い出した。もう終わりだよって風来坊に言われてすごい不機嫌…汗を掻いたなら俺に言えって二人になってから言われた。

つか、旦那さあ……子供返りって意味わかってんのかなあ。それ多分、軍神さんにからかわれただけだって。
なんかすごい甘やかしてくるんだけど、くだものとか食べれないから。ちょっと粥食えるようになったとこだから。
あんま構わなくていいのになあ。世話したいのかなあ。あんまり構われるとあとがさみしいんですけど。
………あー、だめだ女々しいな、俺様。気が弱くなってんのかな。だから旦那に心配掛けるんだよな。もっと平気にならねえと。

言いたいことがあるなら言え！　てしょっちゅう旦那が言う。俺そんなになにか言いたそうにしてるかな。……顔に出ないようにしねえとな。
………旦那は何を言ったら安心したり嬉しかったりするんだろ。

旦那の手が冷たい

まだ熱があるのかな。


目が覚めたら旦那に接吻されてた。
ぼーっとしてたら痛むのか！　て慌てられたから痛くねえよって言ったけど、旦那はすまぬすまぬってしばらく慌ててた。それから痛まぬのならもっとしてもいいかって言うから、いいよって言ったけど、なんだろ、したいのかなあ。
なら悪いことしたなあ。せっかくしたいって思ってくれたのに出来ないとか、なんつうか、間が悪いっつうか……

あー、いや、でも、そういうことじゃねえのかな。もうずいぶん飽きてたみたいだったし、今更な。
死にかけたの見て慌てたとかかな。情を掻き立てられるもんだしなあ。旦那も人の子ってこと？　はは……
あー、俺様って一人遊びうまいよな。なんかさみしくなってきた。

旦那がまたやはり痛むのだな！　て慌てたからなにかと思ってたら、ごしごし顔拭かれた。泣いてたみたいだ。え、なんで泣いてんだ俺様。
びっくりしてたら旦那がまたすまぬって謝った。旦那が謝ることなんかひとつもないよ。すごくよくしてもらってんのに……


大将は甲斐に帰ったらしい。顔見に来てくれたらしいけど、起きなかったからそのまま発ったって聞いた。
旦那は残ったのかな。大将が残してったのかな。
まあ、どっちにしても身に余る光栄ってやつだよな。

…………。
旦那も帰っても平気だったのに。仕事溜まってるだろうなあ。

昨夜はいよいよ駄目かと思ったぞ

って、大将はなんでそんな楽しそうに言うの……息を吹き返したのには医者が驚いてたって、まあ、一応これでも真田忍びなんでねえ。丈夫なんですよ。
………笑うなよもー。むかつくおっさんだなあ。

気が付いたら次の日だったくらいにしか俺様覚えてないけど、ちょっと死にかけたらしい。
旦那はどうしたんだろうって思ってたら、さっきようやく寝たって言われた。寝たっていうか、寝かせたっていうか、気絶させたっていうか、なんかそんなんなんだろ……
あんま頭殴らないでくださいよ、大将。あの人が馬鹿になったらどうすんの。

お二方がまだ上杉にいるってことは、甲斐は空ってことなんですよね。領地空にするとか、ほんと勘弁してよ、もう。真田の旦那連れて早く帰ってくださいよ。
………え？　いやいや、そりゃひとんちなんか居心地いいわけねえけど、お守りなんかいらねえって。……いやほんといいって、ガキじゃねえんだから、心細いとかないから。


大将が、幸村がお主の声が出ぬようで苦しそうだと言っていたがようしゃべるなって言った。そういや声、結構出るようになってるな。死にかけた反動かな。それともやっぱり環境かな。
たしかにこっちは涼しいしじめじめしないしふとんふかふかだしなー。医者もいるし、ふさがんなかった一番でっかい傷もくっつきはじめたし。

笑ってた大将が急にもう寝ろって頭撫でた。……言われたらなんか疲れたな。申し訳ないけど、ちょっと寝ようかな。


あ、大将。
迷惑掛けてほんとすみません。

あんまりわかんないけど暑いらしい

桃まだあんまり甘くなかったなって言われたけど、なんか充分甘かった…ちょっと味覚おかしいんだろうな。薬しか口に入れてなかったしな。
あんまり飲めなかったから旦那は桃も好きではないのか？　とか言ってた。

ちょっと話してたら急に喉に噛み付かれたからなにかと思ったけど、そのほうが俺の声聞き取りやすいのかなと思ってそのまま話してたら旦那がかすがに蹴り飛ばされた。そのまま追い出されちゃった……あーあーあー。
お前もやめろとかなんとか言え！！　てそんな、真っ赤になっちゃってまあ……べつにやらしーことしてたわけじゃないでしょー。つうかお前、昨日も旦那蹴り飛ばしただろ。なんでそんなことすんのよ、もー。
……え？　なにしてたって？　もちょっとはっきり言ってくれないと聞き取れないんですけど……
なに、もういいの？　変な子だなあ。



風来坊が明日熱が高くなかったら移動するぞって宣言した。幸村が運んでくれるよって、ええー…上杉さんちに行くんでしょ？　申し訳ないっつうか……
あー、でも、今のままだと風来坊もこんな山小屋にいなきゃないし、旦那も宿から通ってるみたいだし、だったら上杉さんちのほうがいいのか……旦那の護衛も大将の護衛と一緒にできるから、何人か帰せるしな。

かすががちらっとこっち見て諦めろって言った。……まー、俺様に口出しの権限があるとは思ってないですけど。わかってんならお前もなんか言ってくれればいいのに……
………軍神のとこかあ。はあ……気が休まらねえなあ。

ぶどう食べれなかった

せっかく旦那がとってきてくれたのにな……旦那、残念がってたな。ぶどうは嫌いか、て言われた。
きらいじゃないよ。旦那がとってきてくれたのに嫌いなわけねえだろって思ったけど、やっぱりちゃんとしゃべれないから伝わらないな……あー、でも、しゃべれても伝わらない気もするな。
……なら、しゃべれなくっても一緒じゃねえかな。

にしても旦那、ほっぺのあとすげえな……よっぽど殴られてんだなあ。やっぱり大将に、留守番仰せつかってたんだろうなあ。

薬湯はなんとか飲めるようになった。かすがの薬湯ってあんまり苦くない。苦くないように作ってくれてるのかな。なんだかんだで優しいよな、あいつ。
もうちょっと傷が塞がったら場所移すぞって風来坊が言ってた。


旦那がいろいろしゃべってたけど、途中ですごく眠くなった。がんばって聞いてたけど無理。
なんか、旦那がしていいか、とか言ってるけど、なんだろう。何の話してんだ。まだしゃべってるのに……眠い……



旦那が顔に触った気がする。